• 羽中田昌

エッセイ 韮崎生活  ♯1

最終更新: 2018年10月30日

「空を見る窓」



我が家には大中小さまざまな形態の14の窓がある。

26坪の平屋の家からすると少し多いかも。私はその窓がみんな好きだ。

なぜか・・・?

それを、気ままに紹介していきたい。引っ越し早々の1回目は居間の採光用の窓から。


イメージを膨らませてもらうために、最初に窓についての一般的な解説を引用する。世界大百科事典 第2版から。


人の出入りを目的とせずに壁,屋根に設けられた開口部の総称。窓の機能と目的は,大別して三つある。

(1)通風,換気。これは,〈窓〉を意味する英語のwindowが〈風の目〉を原義とすることにも表れている。

(2)採光。

(3)建物内部から外の眺望を得ること。

窓には,目的,形態,位置,開閉方式,構造形式,創作者などにより,非常に多くの分類名称がある。目的による名称には,換気窓,採光窓,のぞき窓のほか,特殊なものとして防火窓,防水窓,防虫窓,遮音窓,気密窓,放射能遮断窓などがある。 以上


ちなみに、上にのぞき窓とあるが、早とちりの人が妙なイメージを膨らませてはいけないので、念のために確認。ここで言うのぞき窓は、屋内や舞台裏などから覗いて様子を見るための窓、機械の計器などを見るためについている窓にも言うそうだ。

「窓は通り道。内と外をつないでくれる。風と光と匂い、そして想像と可能性の通り道だ。」

少しかっこつけ過ぎだが、これは私の勝手なコンセプトである。さて、能書きはこのくらいにして本題に入るとしよう。


我が家の居間は台所も一緒のつくり。なのでリビングダイニングキッチンという言い方が正式となる。吹き抜けのこの部屋には全部で8つの窓がある。

まず南側の壁、流し台の後ろの食器棚の上に小さな「内倒し窓」が横に4つ並んでいる。まゆみのお気に入りで、採光と換気にもなる。庭に面した西側の壁には4つ。「引き違い」が1つ、「縦すべり出し」が1つ、そして「Fix窓」が2つだ。

今回の主役となるFixのみ少々説明しておくと、一般的な開け閉めができる窓に対して開閉ができず、壁にはめこまれて固定されることから「はめ殺し窓」とも呼ばれている。幅1690×高さ570㎜の細長い四角い顔をして、吹き抜けリビングの上部に横並びに配置されている。

愛犬ルナはどうか分からないが、私たちはいつもこの窓から四角い空を見あげる。

真っ青な空もあれば、曇り空も夕空も星空もある。今は薄青の空の上を薄白の雲が右から左に早く流れている。深秋を感じた。

まるで韮崎の様々な空を切り取って白壁に飾っているようにも見える。この空の下で、人は何を考え、悩み、喜び、どんな人生を送っているのだろうか。詩の一説ではないが「みんなちがって、みんないい」。

それにしても、まゆみの鼻孔は見上げると、一層はっきり見える。


胸から下の感覚を失った19才の夏。事故から3ヶ月間、病室で寝たきりだった。

ときどき母が「ほら上手く角度を変えて、外でも見てごらん」と言って四角い小ぶりの置き鏡を手渡してくれた。そこには窓の向うの四角い空があった。

一度だけ、飛行機がスーッと現れ、靴紐のような白い雲を残していった。私は、まだ人生があると感じた。

四角い鏡を見ながら、生きるために笑顔の練習をしたのを思い出す。「窓は可能性の通り道」、これもまんざら間違いではなさそうだ。



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