• 羽中田昌

フットボール・ラブ ♯6


「フットボールに必要なスピードについて」 其の2



お待たせしました、「フットボールに必要なスピードについて」の其の2です。

前回は、ラファエル ポル(ラファ ポル)の著書から、彼が思考するフットボールに必要なスピードの定義を私なりに解釈してお伝えしましたが、今回はその能力を発揮するための条件になります。さらに細かい、突っ込んだ話になると予想されますが、がんばっていきましょう。私もねじり鉢巻でラファ ポルの頭脳に迫り、できるだけ簡単にわかりやすく、伝えられるよう挑んでいきます。どうぞ、よろしくお願いします。



フットボールに必要なスピードの条件


「選手の状態、周囲の状況、選手の意図。この3つが複雑にインタラクション(相互作用)するプロセスから、試合中、状況に応じたフットボーラーたちのプレーが生まれる」(Araújo, 2005; Davids et. al, 2008)




一般的にフットボールでは、移動の速さとリアクション(反応)の速さを指してスピードと呼んでいますが、はたしてそうなんでしょうか。

そのリアクションを、判断とアクションの2つの要素に分け、判断のスピードとアクションのスピード、この2つを連動させるためのスピードトレーニングが多く行われているようです。

ということは、最初、判断とアクションのスピードトレーニングをそれぞれ行い、2つを分けてからくっつけるという、古典的な考え方でトレーニングが進んでいるわけですね。

これは、昨今、コレクティブなスピードについての重要性が唱えられ、熱心に研究さているにもかかわらず、そのことを見逃していることになります。

例えば、あるチームが、ドライブ(状況を見ながら運ぶドリブル)で敵を引き付けてから、遠くの味方にパスを出す。ボールはヒトよりも速いので、その速い移動によってポジション的あるいは数的な優位性を獲得できます。対戦チームは、その不利を補うために急いで移動しなければなりません。

つまり、グループで連係することで攻撃のスピードを上げて、ライバルを不利にするためのスペースと時間を得るのです。ここでラファ ポルは著書の中で、興味深い表現をしています。

「一見、複雑に見えるチームプレーも、実はとてもシンプルな個人のプレーが連係することで実現している」

「個人のプレーとは、チームの高い創造的な連係のためにある」

言い得て妙だと思います。


このことから、スピードを単に個人の能力だけに限定するのは、誤りであるとラファ ポルは断言しました。

フットボールに必要なスピードを語るとき、まずチームのコレクティブな連係を分析することから始めるべきで、そのためには、多様な選手間の連係パターンが、どうやって生み出されて改善されていくのかを探求するとともに、選手の決断までのプロセスを考察していく必要があり、そして、身体的な動きや移動のスピードを実行するための神経―筋肉系のさまざまな側面を分析していくことが大切だと言っています。

スピードのパフォーマンスを改善するためには、選手の判断のスピード、身体を動かすアクションのスピード、チームメイトとの連係、この3点を考慮すべきで、しかし、それぞれを分けて個別にトレーニングすることはできないのです。なぜなら、この3つは同時に同じ場所で実行されているからだ!ということでした。


例えば、ダイレクトパスを入れるタイミングの判断が良い選手がいたとしても、正確なテクニックでパスを出すことができなかったら、チームメイトは有利な状況でボールを受けることができません。いくら良い判断ができても、それを実行するテクニックが伴わないのだから、状況に適した好プレーにはならない。つまり、判断とアクションを分けて考えることはできないので、分けてトレーニングすることもできない、ということになるのですね。

アラウージョは〝スポーツにおける戦術的アクション、意思決定のコンテクスト〟という著書で、「リアクションは刺激に対する反応の結果ではなく、刺激を取り込んで目的を達成する行為である。リアクションは常に判断のプロセスとフィードバックし合っているので、原因と結果のような一方向的な捉え方では、決して理解することができない。刺激とリアクションの間で起こる相互作用の螺旋ループのような視点で捉えるべきだ」と言っています。

また、Marti Ortegaも論文の中で、「意思決定のプロセスの間中ずっと、知覚情報はチェックされ続けているので、アクションを起こす前段階と意思決定の瞬間はつながっていて切り離すことができない」と述べたそうです。

んー、どこまでが判断で、どこからがアクションなのか…、切り離す点が存在しないということでいいでしょう。


これらのことを踏まえても、テクニックと戦術を2つのプロセスに分けてトレーニングする古典的な考え方には疑問が生まれる。

判断とアクションの関係と同じで、いくら良いテクニックを持っていたとしても戦術的判断が伴わなければ効果的なプレーにはならない。良い戦術的判断を持っていてもテクニックがなければ実行できない。

どちらか1つが欠けてもダメ。繰り返しになりますが、同時に同じ場所で実行されているのですから、分けてトレーニングすることなどできません。

また、フットボールのようなチームスポーツでは、個人のプレーだけ見て、効果的なプレーかどうかを測ることができないとも言っています。つまり、チームメイトとの連係や対戦相手ぬきに効果的なプレーは存在しないのです。

ゴール前のスペースに深い縦パスが正確に入っても、パスを受けるはずの選手が、チームメイトのマークを引き剥がすために、相手のディフェンダーを引き連れてサイドに移動してしまったら成立しません。

また、よくフットボールの中継で、「良いクロスだったけど、シュートする選手がいなかったのが残念だなー」という解説を耳にします。これは逆に、「ゴール前にシュートを打てる選手が誰もいないのに、なぜクロスを入れたのか」と言うべきではないのか?


だからこそ、このようなことが試合で起こらないために、スペースとタイミングを合わせる連係のトレーニングをするべき。

繰り返しになりますが、フットボールに必要なスピードのパフォーマンスを改善するためには、選手の判断のスピード、身体を動かすアクションのスピード、チームメイトとの連係、この3つを考慮すべきで、それぞれを分けてはならないのです。


(話しが)熱くなってきましたが、今回はここまで。

次回は、フットボールにおける判断のスピード、というものについて考えていくことになると思います。どうぞご期待ください。頑張ります。



其の2終わり To be continued

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