• 羽中田昌

フットボール・ラブ ♯7


「フットボールに必要なスピードについて」其の3・最終回





お待たせしました。其の3です。これまでどおり、ラファ ポルの著書を翻訳したものに、私なりの解釈と見解を加えさせてもらいました。できるかぎりわかりやすく簡潔に、という願いも込めています。

また、この著書でのラファ ポルのスピードに関する見解は、まだ続きますが、私の都合ですが、区切りとしたらいいタイミングではないかという判断で、今回が最終回となります。どうぞ、ご了承ください。

次回からは、フットボールの監督の仕事、について考えていきたいと思います。


では、スピードについて、じっくりお楽しみください。



フットボールにおける判断のスピード


「人間の脳は“主観と客観” “身体と心(精神)” “物質の世界と観念の世界” をつなげる働きをしている。それは脳のさまざまな部分が、時間とともにつながったり離れたりしながらオートマチックに行われる、正に組み立て作業と言える。このようにして脳は、まず周囲を感じ取って、それを全部そのまま記憶するのではなく、部分に分けて記憶してから、それらの部分をつなぎ合わせて整合性を持たせる。この絶えず動き続ける一連の流れ、それは、各プロセスの間で常にインタラクション(相互作用)しながら行われているので、原因と結果のような単純な仕組みでは語れないのである」(フィンゲル兄弟2004、Kelso,2002、Freeman &Barrie,1993)


選手はどのように周囲の変化を感じ取って、プレイにつなげているのか?

それは正に、上記の言葉が示している、原因と結果のような単純な仕組みでは語れない、のでしょう。

選手が感じとっている、とてつもなくたくさんの周囲からの感覚情報の中から、自分のプレイと関連するものを選び出す段階があり、その選び方は、過去の記憶に影響されるそうです。

したがって、行動と認知の生物学的基盤は、脳ネットワークの分布にのみ反応するのではなく、その自己組織化のプロセスに反応する、ってことらしい。んー、でも、なんとなく解るぞー!


大脳皮質には、いろいろな領野、つまり領域、分野があり、各々が違った機能を受け持っている。例えば、視覚情報や嗅覚、聴覚、体性感覚などに別れていて、その各領野に合った感覚情報を受け取っているので、その時点では情報はバラバラのまま。

でも、その情報を組み立てて整合する働きが脳にはあるのです。

どうやってバラバラな情報を整合化するのか?というと、情報をインプットした脳の各領野がインタラクションしながら協力し合うことで、より複雑で高度な情報となって判断につながっていく。つまり、これがバラバラな情報を再構成する自己組織化のプロセスなのです。

このような仕組みのおかげで、人間は複雑で変化しやすい周囲の環境にも適応できる、ということですね。


よって、長い間、信じ込まれている刺激に対する反応としてのリアクション、という図式は存在しません。当然、判断してアクションするという一方向の関係も存在しない。

そこには判断とアクションの間のインタラクションのプロセスがある。脳のしくみは、古典的な科学の線形と呼ばれる原因→結果という単純な形ではないのだから。んー、納得!

(※参考: これは行動主義心理学的な立場に対する否定とも取れますね。行動主義心理学の創始者であるワトソン(1878年1月9日 - 1958年9月25日)は、アルバート坊やの実験で、赤ちゃんにネズミへの恐怖心を植え付けたことで有名です。学習は刺激→反応の繰り返しによる強化なので、選手の内部で起こっているプロセスは無視されます。刺激に対する反応だけを見て学習が達成されたかどうかを見ると言う考え方。なので、学習は知識を伝達してもらって達成するもの、監督は知識を提供する人、になるそうです)


また、脳内に蓄積されたアクションのイメージの記憶をベースにして、次の判断に生かすとは言え、選手が周囲の変化を感じ取るために、いちいち記憶を掘り起こさなくても周囲の変化に適応できるのはなぜか?

それは、脳が判断を下す前の段階で、有用な情報をつなぎ合わせると特定のパターンができ(たぶん、これが無意識の領域)、そのパターンに対してヒトは判断を下している。そして、このパターンは毎回異なっていて、作られては消え、消えては作られています。んー、脳って合理的!とあらためて感じますよねー。


フットボール・ラブにおけるスピードについてのラファ ポルの考察の紹介は、ここまでで区切りとさせてもらいます。最後は、下記の私の感想で締めたいと思います。


脳はすごい!

「フットボールは足を使って、頭で行う」、生前、ヨハン クライフが、そう言っていたかと。

やっぱりフットボールは、インタラクションする関係性を鍛えないとダメだと思いました。周囲とのつながりの中のアクション(プレイ)の記憶を脳内に増やしていく。戦術メモリーを増やしていくことの重要性にもつながっているような気もします。

だからトレーニングも常にボールを使いながらグループでやることが大切。集まってトレーニングできる貴重な時間に、素走りなどありえない。移動のスピード、アクションのスピード、体力、これらも常にボールを使い判断を伴うトレーニングで強化しなければならいのですね。

子供のころから、判断を伴うトレーニングにかける時間の違いが、大人になって、世界のトップクラスとの差になっていくのではないか。全体と調和しない、部分だけの素走りや一人でドリブルだけをひたすら繰り返すトレーニングを肯定してはいけないのだと思いました。



終わり

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