• 羽中田昌

フットボール・ラブ ♯11

「フットボール監督について」其の4


今回は、いつものスペイン本から「最も大事なのはトレーニング!」を選んで訳しました。監督時代、雑誌とかのインタビューで、比べるものではないのですが「試合よりトレーニングの方が好きかもしれません」とか正直な気持ちを言っていました。それはこの文を読んだからだったと思います。トレーニングについてより深く考えるきっかけを与えてもらい、頭の中が整理できたのではないでしょうか。すると私にとってトレーニングがより楽しいものに変わったのです。


ほぼ毎朝4時に起きてトレーニングメニューを考え、次の勝利を目指し、グランドでコーチ・スタッフたちと力を合わせて選手にフットボールを伝えていく。この作業がたまらなく楽しくて、選手とトレーニングに夢中になる時間が私は大好きでした。


それでは、どうぞお楽しみください。




「最も大事なのはトレーニング!」


選手のメンタル強化は基本中の基本だと言っていい。失敗を恐れない勝者のメンタリティが必要だ。しかし、それはプラスαの部分でしかない。トレーニングの質が悪いのに、いくらメンタル強化だけを叫んでも成功はしない。

作戦ボードだけの戦術も過去のものとなった。悪いものを良いものに変え、良いものをより良くするために、進んで自らが学んでいくことを実行するトレーニンググランドこそが選手と我々監督のホームなのだ。


監督はそれぞれ自分のビジョンを持っている。よってトレーニングのメソッドも監督の数だけある。この本をトレーニングメソッドのマニュアル本にしようとは思ってはいない。ここで私が伝えたいのは、チームのパフォーマンスをトレーニングで上げることの重要性なのだ。

シーズンを長期と短期のサイクルに分けてトレーニングを構築したり、試合ごと(1週間)のサイクルでトレーニングを構築するなど様々なメソッドがある。また、フィジカルの負荷を中心にして戦術的なトレーニングを組み立てるインテグレードトレーニングやフィジカルと戦術‐テクニックを分けないPT(戦術的ピリオダイゼーション)などのメソッドもある。いま私は試合ごとのサイクルでPTに近い考え方でやっているが、もちろん他の考え方もすべて尊重している。

これまで長い間、いろいろなメソッドを試してきて、それぞれ異なった結果となった。良い結果を生んだのは何かという検証をするつもりも毛頭ない。しかし、どのようなメソッドを使ったとしても試合でのパフォーマンスの向上を目的としてトレーニングを考えることは不可欠である。

選手が自分のチームのプレーの原則を学んで具体的なゲームモデルと同化するためには、試合中のアクションに似せたトレーニングをしなければならない。つまり、各選手や各ポジションの具体的な戦術の視点を持ったグローバルなやりかたのトレーニングを考えるべきなのだ。


プレシーズン初めの監督のミッションは、チームの調和とベースを獲得して、将来豊かさに変わる基本的な戦術プランを設置することだ。

もし、それが4-3-3のダイレクトプレーなら、このチームスタイルに不可欠な基礎(例えば4-3-3からの守備ブロックの作り方やブロックのスライドの仕方、サイドでのクロスオーバーなどなど)をチームが修得する必要がある。

これらは階段の上り下りや持久力を鍛える走りのトレーニングでは身につかないのは明らかだ。プレシーズンに走って走って走りまくるトレーニングを取り入れるチームがあるが、私はその期間を自分たちのチームを知る、考える、そして個人としてではなくチームとしてのトレーニングに使っている。シーズンのために走り込みをしてカラダをやたらといじめるという古典的な考えは結局ケガというリスクがつきまとう。

チームとしてのトレーニングというやり方は、新加入選手がチームスタイルの一部を作り出すとともに、すでにいる選手の存在を意味あるものにするのに役立つ。つまり新戦力はチームを知り、チームは戦術的な意味での新戦力の可能性を知ることができる。

私は選手の特性を見極める努力をするとともに選手にチームのゲームモデルを受け入れることを要求する。誰が良い選手なのかではなく、まず誰がチームのゲームモデルをより良く受け入れることができるのか?を見極めるのだ。

また、プレシーズン中でも個人ではなくチーム全体で、本番の試合に備えるような戦術的なトレーニングを行う。このタイプのトレーニングは各ポジションの選手が自分のミッションを知ることができるという大きなアドバンテージを持っている。そのミッションは誰がスタメンになろうとも変わらない。

しかし、ほとんどのチームはプレシーズンを基本トレーニング(パワー,スピード、持久力、テクニック、シュート)の時間に費やしている。トレーニングで個人を鍛え、テストマッチで初めて11人の連係の実践をしているようなものだ。これでは、スタメンとそうでない選手に大きな溝ができてしまう。もし1番手がケガをしたら2番手は準備ができていないため試合で良いパフォーマンスを提供するのは難しい。試合でしか連係を学べないのだから選手にとっては酷である。


グループでの戦術トレーニングは多くのことを学ぶことができる。

攻撃と守備を分けない、あるいは戦術とテクニックとフィジカルを分けないトレーニングをしていれば、チームの誰もが試合に出る準備が整っているといことになるはずだ。これは、選手選考の際にも有効だ。1番速く走るのは誰かではなく、システムとゲームプランに従って、そのポジションに最も適しているのが誰かという尺度で選べるので不公平も生まれない。選手が納得しやすい状況をつくれるのだ。たしかに、それでも納得しない選手もいるが・・・


以上、いかがでしたか。トレーニングについて深く考え、より楽しんでいただく、きっかになれば幸いです。フットボールの始まりはトレーニング、ではないでしょうか。


To be continued

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