• 羽中田昌

フットボール・ラブ ♯10

「フットボール監督について」其の3


今回は、引き続きスペイン語のフットボール本より、「監督の夢...! 私の夢!」を選んで訳させてもらいました。どんなチームを創造したいか、という私たちの夢をみんなで衒いなく考えることができれば幸いです。

以前、このフットボール・ラブの♯1から♯4でヴィッセル神戸監督に就任したリージョの「フットボーラーとプレイ」の考察を紹介させてもらいました。それは日本のみなさんにリージョンを深く知ってもらうきっかけになればと思ったのと、リージョンが日本に来て、いつの日か夢のようなチームを創り、それを披露してくれるのではないかと期待に胸を膨らませたからです。

先日、日本を離れたようですが、リージョン解任のニュースを耳にしたときには残念でなりませんでした。「やっぱりか」と嘆いてもしまいました。何故、やっぱり、だったのか。フットボール・ラブの♯1で私は冒頭、こんなことを書いています。


私は思う。

この2つ(イニエスタとリージョン来日)の奇跡をただ喜ぶだけで終わらせてはならない。世界と伍するための2度とないチャンスと捉えるべき。日本サッカーをより魅力的なものにするために謙虚に彼らから学ぶのだ。

たとえ目前の神戸が負けようとも目を背けない。フットボールは時間がかかるもの。2人がこよなく愛す連係のフットボール、その深淵に触れる努力を始めよう。

以下は、少々、古い文献になるがリージョの貴重な考察が記されている。拙い翻訳だが共有させてもらう。長文になるので、3回に分けて(結局4回になってしまったが)お伝えすることをご了承願いたい。

これが、リージョを学ぶことへのとっかかりになることを願う。

「ゴールのために、見えない強い糸で11人全員が繋がり続けることこそがフットボールだ。」

いつまでも私は、そう考える者の一人でありたい。


リージョは時間を与えてもらえなかったのではないでしょうか。勝てば全肯定、負ければ全否定という二項対立の考えにリージョは敗れたのかなー、と思いました。やっぱり残念ですし、何もできない自分に怒りすらおぼえました。


このフットボール・ラブ♯9の中程に、著者が自分のチーム作りの夢を語っているところがあります。私も久し振りに考えてみましたが、みなさんも是非。いつの日かグランドで、その夢を語り合えるといいですね。


それでは、どうぞお楽しみください。




「監督の夢...! 私の夢!」


監督は常に行動を起こす前に考えて、自分の決断の理由を理解していなければならない。

良い監督はイメージを持ち、膨らますことができる。それがチームのアイデンティティとプレーモデルの礎となり、ひいては、そのイメージは現実になるための質の高いトレーニングへとつながっていく。

 

監督は自分のチームを夢見るべきなのだ。


そして、その夢を実現するための体系的なトレーニングを実施する。

夢のない監督はアイデア(考え)と工夫のない監督だ。常に結果だけに怯えているため具体的かつ体系的なトレーニングができない。勝つと、相手関係なしにただ同じことを繰り返し、負けるとラジカルにやり方を変える。それは、“今までやってきたことは、すべて間違っていました”というメッセージだとも気づかず、自分の非力を選手たちに曝け出している。


チームのプレーモデルは唯一無二である。正にそれは、それぞれの監督の夢であり、その夢は成功をもたらすための大いなる力である。しかし、ここで言う成功とはチームが選手たちの可能性をマックスに引き出すことだ。二項対立の勝ち負けだけではない。


監督の夢であるプレーモデルは、1つないし2つのフォーメーションを持って成立させるといい。そのフォーメーションを選ぶためには、まず選手たちの特性を知らなければならない。なぜなら同じ4-3-3のフォーメーションでもチームを構成する選手の特性が違えば、全く異なる4-3-3のチームになるからだ。

役割の決まった駒を動かすだけのチェスとフットボールは違う。フットボールは選手たちのものであり、チームスタイルが選手を作るのと同じように選手がチームスタイルを作る。

(古い話になるが)スペイン代表にカシージャス、チャビ、セナ、トーレス、ビジャがいなかったらヨーロッパ選手権での優勝はなかっただろう。しかし、この面子がそろっていたとしても5バックでFWへのロングボールを主体とする中盤を省略したプレーモデルで戦っていたら、ヨーロッパのチャンピオンにはなれなかったはずだ。


では参考までに私の現在の夢を語らせてもらう。


まずゾーンディフェンスにおいて、DF、MF、FWのすべてのラインを20~30mの中に納める。

最前線はセンターラインから10~15m前。

最終ラインはセンターラインから10m後。

コンパクトフィールドを形成するのだ。


そのゾーンディフェンスのフェーズの始め方は、敵チームのDFがファーストライン(先頭の守備ライン)を超えてMFへパスを出そうとするのを阻止しながら、狙いをつけた特定のDFにボールを運ばせる。

その狙ったDFに対してはロングボールを蹴らせて回収するか、パスコースを限定しながらプレッシャーをかけ、ショートパスを出させる。敵がショートパスを出せば、我がチームは罠をかけているのでインターセプトしてボールを奪うことができるだろう。


ボールを奪った時点から攻撃のストーリーが始まる。 

守備計画のとおりにボールを奪取した場所は、敵のゴールにはまだ遠いはずだ。

ゆえに敵の各守備ラインの裏に走り込むためのいくつかのスペースがあるはずなので、まずそこを狙う。

次にインテリジェンス溢れる動きで相手の守備ラインを混乱させて、二人のエクストレモ(ウィング)とワントップ、さらに二人のインテリオール(インサイドハーフ)がアタッキングサードに次々となだれ込む。

ボール奪取直後、目まぐるしいまでの素早いポジティブトランジションとインテンシティで優位性を創り出さなければ攻撃のストーリーは始まらない。同時に味方のDFと守備的MFが激しくプッシュアップし、相手をゴール前に押し込んだまま蓋をしてしまうことも怠ってはならないのだ。


これが私の夢。そして、お分かりの通り、この夢は4‐3‐3で実現させる。


4-3-3にしたのは、違いを出せる二人のエクストレモを使いたいからである。また二人のインテリオールをフリーにしてシュートゾーンまで到達させるために守備的なMFのメディオセントロも必要だ。中盤での数的優位をこの5人(1×メディオセントロ+2×インテリオール+2×エクストレモ)でつくりたかったのだ。

しかし、これだけで完璧なチームができるなどとは勿論考えてはいない。フットボールは日々変化しながら様々な特性を持つ選手たちを関連づけ、絶えず修正を繰り返す競技だと理解している。完璧など存在しない。たとえ存在したとしても知ることは叶わない。完璧という言葉は追及するためにある。


再び、夢から始まるチーム作りについての話に戻そう。

もし、ある監督が勝利のために背の高いFWが欲しいと考えたら、同時に精度の高いクロスも必要となる。よって右サイドは右利き、左サイドは左利きのエクストレモを探すといいだろう。逆に背の高いFWを活かすよりもカットインするエクストレモの方が、勝利のためには重要かもしれないと気付けば、中央のスペースを空ける機動力のあるトップを置く。フットボールという競技は、このように関連しながらことが起こり、チームを成功に導くためのプレーモデルが構築されていく。

さらにプレーモデル構築の話を進めていくとGKの戦術的なクオリティも重要になってくる。もし、ディフェンスラインを高くしたいなら、その背後を利用されないためにゴールから飛び出してリベロにもなれ、ハイレベルのFWとの1対1の対応ができるGKが必要になる。敵は高いディフェンスラインの裏のスペースを長短のパスで狙ってくるからだ。

また、例えばプレミアリーグで必要とされるのは、サイドからのクロスやロングボールに対する処理がうまく、圧倒的なフィジカルの強さと安定感のあるGKである。攻撃面では一気に危険を与えるロングフィード能力を持つGKが好まれるだろう。


最後に夢を実現させるためには、選手がチームのプレーモデルを理解するための具体的で質の高いトレーニングの継続が重要であることを念押しさせてもらい終わりとする。


以上です。

どうでしたか。夢を描いてみたくなったでしょうか。


それではGWを大いに楽しんでください。あー、それから元気に令和をお迎えください。


To be continued

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